• 社長ブログ

性能向上リノベーションが「命と地域を守る工事」である理由

結論:性能向上リノベは快適さのための工事ではなく、家族の命と資産、地域の未来を守るための投資です。

先日、関東スーパーウォールリノベ事業化研究会に参加しました。そこで共有されていたのは、断熱改修を「オプション工事」ではなく「地域インフラを底上げする社会的事業」として捉える視点です。現場で日々感じてきたことと重なるものでした。

なぜ2050年に「ストック平均」でZEH水準が必要なのか

「新築だけ性能を上げればいいのでは」と思われるかもしれません。しかし国の目標は「新築」ではなく「ストック平均」、つまり日本にある住宅全体の平均です。ここに、既存住宅の改修が不可欠な理由があります。

理由1:2050年カーボンニュートラルの国際公約

2020年、政府は2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。あわせて2030年度には2013年度比で46%削減という中間目標も掲げています。パリ協定に基づく長期戦略として、2050年にストック平均でZEH・ZEB基準の省エネ性能を確保することが明記されました。

理由2:建築物分野はCO2排出の約4割を占める

国土交通省の資料によれば、日本のCO2排出量の約4割は建築物分野が占めています。カーボンニュートラルの実現には、この分野の脱炭素化が避けて通れません。

理由3:新築だけでは間に合わない

ここが最大のポイントです。日本にはすでに約5,100万戸の住宅ストックがあります。これに対して新築される住宅は年間数十万戸にすぎず、住宅が入れ替わる速度は非常に遅いのが実情です。仮に2030年度以降の新築をすべてZEH基準にしても、それだけでは2050年時点のストック平均を押し上げるには全く足りません。

実際、既存住宅のうち断熱等性能等級4に満たない住宅は全体の約9割、2000年以前に建てられた住宅は全体の約65%を占めるというデータもあります。つまり、日本の住宅の大半は今のところ省エネ性能が不十分なまま存在しているということです。

だからこそ国も、新築の基準引き上げと並行して「断熱窓への改修」「高効率給湯器の導入」など、既存住宅の省エネ改修を政策の両輪として位置づけています。ストック平均を動かせるのは、新築ではなく既存住宅の改修なのです。

理由4:改修は待ったなしのペース

前回お伝えした通り、この目標を達成するには今後25年間で年間120万戸の改修が必要という試算(野村総合研究所)があります。逆算すると、2050年まで指をくわえて待っている時間はなく、「今」着手する住宅の数が、そのまま国全体の達成度を左右するということです。

見えないリスク:ヒートショック

暖かいリビングから寒い脱衣所・浴室へ移動すると、血管が急収縮し血圧が跳ね上がります。これがヒートショックです。

消費者庁や東京都健康長寿医療センター研究所の推計では、入浴中の急死者数は年間約19,000人。交通事故死者数(2023年:約2,600人)の約7倍にあたり、原因の多くは住まいの断熱不足による室内の温度差です。

近畿大学・岩前篤教授らの調査でも、断熱改修後に居住者の高血圧の有病率が改善する傾向が報告されています。断熱性能は「快適さ」ではなく「健康」に直結する数値です。

資産を守る:建物寿命の延伸

日本の住宅は平均約30年で取り壊されますが、イギリスやアメリカでは60〜80年以上使われる住宅も珍しくありません。2019年時点で断熱等級が「無等級」の既存住宅は全体の約9割という調査結果もあります。

性能を上げて住み続けられる住まいにすることは、建て替え(数千万円規模)の出費を先送りできる、確実な資産防衛策です。

弊社の取り組み

築年数の経過した住宅で、Ua値を0.87から0.46まで改善したフルリノベ事例があります。熱の逃げにくさがおよそ倍に改善した計算です。施主様からは「冬場の底冷えがなくなった」とのお声をいただいています。

研究会で改めて実感したのは、一軒一軒の改修の積み重ねが地域全体の住宅性能の底上げにつながるということです。国も2050年までに住宅ストック平均でZEH水準達成を目標に掲げ、今後25年で年間120万戸の改修が必要とされています(野村総合研究所調べ)。

まとめ

断熱リノベは、命・資産・環境を同時に守る工事です。弊社は今後も、パッシブデザインと耐震技術に加え、既存住宅の性能向上リノベを通じて、地域の住まいの安全と資産価値を支えてまいります。


出典:消費者庁、東京都健康長寿医療センター研究所、岩前篤(近畿大学)断熱改修調査、野村総合研究所「ZEH・GX ZEHの2050年目標に向けた普及シナリオ」、国土交通省「エネルギー基本計画」「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方」、環境省「住宅脱炭素NAVI」